<医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律について>
医療的ケア児への支援はこれまで国や地方自治体の「努力義務(児童福祉法第56条の6第2項)」とされてきたが、「努力義務」規定のため、多くの自治体では取り組みが進まなかった。特に、医療的ケア児の預け先は極端に不足しているため、家族が24時間ケアを担うことにより、生活面で多大な負担が生じたり、就労機会を失ったりするなどの問題があった。
2015年、超党派の国会議員・関係省庁・事業所・当事者団体が医療的ケア児の施策について検討する「永田町子ども未来会議」が発足。この会議の議論によって「医療的ケア児支援法案」を起草。2021年の通常国会での提出・成立を目指し、2021年6月11日、参議院本会議で「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」(以下、「医療的ケア児支援法」)が可決された。施行は2021年9月18日。
家族の負担を軽減し、医療的ケア児の健やかな成長を図ることを目指してまとめられた医療的ケア児支援法において、医療的ケア児に対する支援が国や地方公共団体の「責務」と明記されたことにより、各自治体は保育園(所)や幼稚園、学校などで医療的ケア児を受け入れるための支援体制の拡充が求められることとなる。
<概要>
●医療的ケア児支援法の基本理念(第3条)
① 本人・家族の生活全般を社会で支援
② 関係機関・民間団体の連携による切れ目ない支援(インクルーシブ教育の支援等)
③ 高校卒業後(医療的ケア児から医療的ケア者への移行後)の生活も配慮
④ 本人・家族の意思を最大限に尊重
⑤ 居住地域に関わらない等しく適切な支援
●責務規定と財源措置(第4~8条)
これまで国と地方公共団体の支援は「努力義務」であったが、「責務」に格上げされた。政府による財源措置によって、地方公共団体は予算を確保して施策を実行しやすくなった。交付額については、今後検討される。
●保育園(所)・学校への看護師等の人材配置(第9.10条)
医療的ケア児を受け入れるには、医療的ケアができる人材を配置する必要がある。
●医療的ケア児支援センターの設置(第14条)
各都道府県に少なくとも1か所設置される。